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遺伝子組み換えとTPPの危険性について 天笠 啓祐先生

January 17, 2017

 

・はじめに

最近の悲しい出来事は

①築地市場移転問題で、都が豊洲市場(江東区)で実施した地下水モニタリングの最終9回目の調査(暫定値)で、最大で環境基準値の79倍に当たる有害物質のベンゼンと、検出されてはいけないシアンが計数十カ所で検出されたという。

7回目までは検査では基準値をクリヤーしていたのに、8回目でわずか越え、9回目の検査では79倍の数値というのは、どういうことなんだろうか。都知事が変わって、検査会社が変わって、なぜこんなに数値が変わるのか。

②アメリカの大統領にトランプが就任する。大変な人が大統領になってしまうと心配している。ただ、唯一いいことはTPP離脱を宣言していることで、1月20日の就任演説で明言するということなので、それを注視している。

TPPは、本当は我々が止めたかったが、トランプに止められるのはちょっと残念。

親しいアーサー・ビナード氏は、前からトランプ氏の大統領当選を予言していた。ビナード氏は、アメリカの人びとは「ヒラリーでは世の中は変わらない。多国籍企業に支配されている現状からは抜け出せない」と、変化を求めて、トランプに流れた。本当はサンダース氏に大統領になってもらいたかったのだが。

 

 

 

・アメリカ市民、お母さんの動き

サンダース氏の出身のバーモント州は小さな州で、人口60万人。NYの少し北で、自然が豊かで四季の変化もある。そのバーモント州が全米を揺るがせた。というのは、遺伝子組み換え食品の表示義務を州法で決め、罰則など諸条件も大変厳しい内容を定めた。そのため全米が大騒ぎになった。小さな州だが、その州だけで流通する食品などはわずかで、食品メーカーはパニックになった。

それまでは遺伝子組み換え食品の表示義務はなかったのだが、この動きでハーシーやネスレなど、多くの食品企業が遺伝子組み換え原料を使わないなど、原料を切り替える宣言を行い、企業行動が変わろうとした。

しかし、そこにモンサントなどの働きかけで、連邦議会が「各州の表示法を無効にする」法律を制定して、このバーモント州の画期的な表示法はだめになってしまった。しかし、アメリカの市民は遺伝子組み換え食品に反対してさまざまに活動をしており、そのアメリカ市民の動きはとても参考になる。

一人のお母さん、ゼン・ハニーカットさんが言い出してMoms across Americaという組織が作られた。子どもたちの健康障害が広がり、その原因に遺伝子組み換え食品があるとして、反対運動を始めた。その動きが大きくなり、今やMoms across Worldを作ろうとしている。私たちもその活動を応援している。お母さんが立ち上がると、本当に強い。

(*注:ドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット―私たちの生命のギャンブル』でも取り上げられていた)

 

 

 

・TPP強行採決の影響

私は2016年暮れに参議院で参考人として呼ばれ、各党からの質問に答えた。そこでは「食の安全」についての議論がなされた。しかし、その質疑のあとTPPは強行採決されてしまった。アメリカがTPPを離脱するから意味が無いと思っている人も多いが、実はTPP加盟を強行採決してしまったことは、今後に深刻な問題をもたらすことになる。

というのは、そこで決議された内容が今後の自由貿易交渉の前提になってしまうからだ。

今後の自由貿易はどう推移するか、これはとても難しい問題で予測はなかなかつかないが、トランプは「America first」といっている。TPPはやらないが、二国間交渉は積極的にやっていくと思われる。その二国間交渉では、批准したTPPの中身が前提で交渉が始まる。TPPは生きているのであって、けっしてなくなったわけではない。

 

 

 

・自由貿易とは何か。

これから日米交渉を始め、自由貿易交渉が次々と行われることになる。このままでは自由貿易の流れは止まることがない。自由貿易とは何かといった際に、私はよく100mの徒競争に例えて説明する。スタートラインが一緒に競争させられるからだ。どんな人も同じ条件で戦えば、若くて強くて早い人が勝つだろう。オリンピックの金メダリスト一緒に競争すれば、赤ちゃんや老人、障害者などは必ず負けてしまう。最初から勝者は決まっている。それが自由貿易で、金メダリストである多国籍企業が勝つためのものが自由貿易である。

 

最近、アグリビジネスの再編が起きている。金メダリストになろうとして、より強者を目指しての合併である。ドイツのバイエル社がアメリカのモンサント社を買収して話題になった。バイエルは企業規模的にはモンサントより遥かに大きい。この二者が一緒になると、農薬でも種子でも世界のシェアの3割を支配する巨大企業の誕生である。対抗してアメリカの企業同士で、デュポンとダウ・ケミカルが一緒になった。さらには中国化工集団公司が世界最大の農薬企業であるシンジェンタ(スイス)を買収した。世界の農業・食料はこの3つの巨大な化学会社グループによって支配され、日本の農業や食料も大きな影響を受けていく。「TPPは国家より企業の力が強いとするところに特徴がある」。企業が政府を訴えることができるISD条項が、その最たるものである。

 

 

 

・日本政府はどんな態度なのか。

格差社会からナショナリズムが高揚しているというのは世界に共通した現象だが、安倍政権も同じである。戦争ができる国にしようとしており、企業が活躍できる世の中にしようとしている。これすなわち「富国強兵」である。

どんな国との自由貿易交渉でも、最優先で相手国に自由化を求める分野がある、それが自動車。自動車産業は今、国の中心産業になっている。自動車は10万点の部品から成り立ち、裾野が広い。そのため1台の自動車を販売すれば多くの企業の売り上げになる。

日本各地にコンビナートが建設されているが、これも自動車を中心にある。コンビナートは石油精製と石油化学、製鉄所と火力発電、この4つが必ずセットになっている。鉄は自ぎゃくにさ動車のボディになり、その製鉄所など工場を動かすために火力発電所がある。その火力発電所の燃料は重油であり、石油精製工場で重油、ガソリン、軽油、灯油などにわけられる。ガソリン、軽油は自動車の燃料になる。ガソリンはさらに粗製ガソリンとナフサにわけられ、ナフサはプラスチックの原料となる。自動車には多くのプラスチックが作られており、まさに自動車が中心にあり、自動車1台作ることで様々な工業が活性化することとなる。EPA,FTAなどの自由貿易交渉で、最初に自由化を日本が要求するのは自動車の分野である。最初に受け入れる分野が食料である。

また、いまでは原発輸出を他国に持ちかけており、その際、自国で原発が動いていないのは具合が悪いと、国内の原発再稼働を急いでいる。リニア技術に至っては、未完成なのに輸出をしようとしており、武器輸出まで行おうとしている。このように、日本は軍事大国も目指しており、合わせて富国強兵政策である。

 

 

 

・食の安全とグローバル化

2007年に北海道の食品会社ミートホープ社が起こした事件と中国産毒入り餃子事件があった。ミートホープ社は返品された肉のラベルを張り替えたり、再加工して出荷したりしていた。学校給食にも使われていたことで発覚して大問題になった。毒入り餃子事件は中国の天洋食品から輸入した餃子に農薬が混ざっていたという事件だった。

わたしはこれらを調べていて、取引先が同じ冷食会社であることに気づいて、なぜこんなことが起こったのかを考えた。毒入り餃子は40個入りで380円と格安であることにびっくりして、天洋食品の従業員の給与を調べたら、時間20-30円、月給で1万円以下だとわかった。中国の賃金がいくら日本より安いとは言え、経済成長もしており、これは安すぎる。これでは職場は荒廃し、モラルは落ち、衛生環境も最悪で、ゴキブリや鼠が徘徊するのを農薬で処理しなくてはならないような状況が思い浮かんだ。その農薬が意図したか、意図しないか、餃子に入れられたのだと思う。

その格安の餃子と同じレベルで競争させられたのがミートホープ社。低価格競争の中で国内の企業もコストダウンを要求され、非正規雇用、時間外手当未払い、というような状況が常態化し、モラルは落ち、採算もなかなか合わなくなって返品を再加工再出荷というような自体になってしまったのではないか。これは推測でしかないので本当のところはわからない。

しかし、「グローバル化ということは輸入食品が増え、国内の食産業を荒廃させるということ」だと考える。グローバル化によって「日本の食の荒廃がおこる」のだ。

2013年に起きた群馬県にある冷凍食品メーカーのアグリフーズ社も同様に農薬が混入された事件。その構造は天洋食品事件とそっくりである。その地域は外国人労働者の多く、安い労働力を求めて企業が進出した地域である。給料は安いので当然不満も溜まりやすく、それが何らかの問題となって事件を引き起こしたのではないか、と考えている。

毒入り餃子事件のあと冷凍食品の売上は急激に落ちて、その後回復していったが、実は国産の冷凍食品は戻らず、輸入冷凍食品ばかりが回復したという現象が起きている。その中で起きている。2013年には阪急阪神ホテルズや東京ディズニーランドなど、一流のホテルやレストランで食品表示偽装事件が起きた。3.11のあと、放射能の影響で外国人観光客が激減し、ホテルや高級レストランに大きなダメージを与えた。そのため、コストを切り詰めるために、あんな大手が、あんな有名企業が偽装をしていた。

 

 

 

・にせものの食品の横行

グローバル化がもたらしたのが、安かろう悪かろうの時代で、それを象徴するのがコピー食品。コピー食品というのはそっくり食品で、有名なのは人造イクラだが、それに限らず

・ファミレスのカレーに入っている肉が(つぶつぶ肉)、実はタンパク質を牛脂でコーディングしたものだった。

・それは安いビーフコロッケにも使われているという

・イカもどき、というのもあり、この原料はナタデココ

 

インジェクション食品というものもある。よく知られているのはハムで、

・ハムを真っ当に作ると、1kgの豚肉から800g程度のハムしかできない

 そこに添加物を加え、インジェクションという手法で水を注入すると1kgの豚肉が1.5~2.0kgくらいにはなる。大手ハムメーカーは皆こうして増量している。

輸入食品が増えるとこうしたコピー食品が増え、国内の食が荒廃する。

 

 

 

・日本人の主食?

今や日本人の主食はトウモロコシである。(日本人の体はトウモロコシで出来ている)

実は年間に摂取するコメの量の二倍のトウモロコシを日本人は食べている。といってもトウモロコシ本体ではなく、肉など畜産品の飼料の大半がトウモロコシ。

またコーンスターチも、よく使われている。異性化糖や加工でん粉という原材料や添加物を目にすることがあると思う。異性化糖は清涼飲料水によく入っており、コカコーラの500mlビンには56.5gの糖分が異性化糖の形で含まれる。加工でん粉は、先の、ハムの増量剤など増量目的で重宝されている。

 

 

 

・砂糖の問題

砂糖は実はとても保護された産業で、関税率300%、さらに補助金も出ており、農家は守られている。そのためTPPなどで関税など撤廃されると、国内の砂糖産業は壊滅する。その時入ってくるのは、アメリカ産のトウモロコシ由来の異性化糖であり、砂糖はアメリカ産のテンサイ糖となる。

(米国では95%のてんさいが遺伝子組換えである)

 

 

 

・審査の簡略化によるノーチェックの蔓延

TPPは作業部会で協議を行う、情報共有をする、というような文言がある。

実はこの「情報共有」が曲者で、他の国で審査されOKが出たものの結果を共有するということは、独自の審査ができないということである。

遺伝子組み換え鮭や遺伝子組み換えリンゴは既にアメリカで承認され、鮭はパナマで既に養殖が進んでいるし、リンゴも収穫され市場にでまわろうとしている。この鮭やリンゴは安全だとアメリカで評価されている。こういう情報が共有されると、その安全という結論をそのまま流用することになるので、日本では独自審査はできない。

 

輸入手続きの簡略化という問題もある。

現状の92時間という規定を48時間にしようとしており、これにより、実質、輸入時に検疫はできないことになってしまう。残留農薬や食品添加物など、違法行為もチェックできず、そのまま輸入されてしまう。

 

 

・狂牛病対策はどんどん風化している

アメリカで狂牛病が発生した際、日本はアメリカ産牛肉の輸入を止めた。そのためアメリカの畜産業界は打撃を受けた。しかし、すぐにアメリカ政府から日本政府に対する圧力は強まり、日本はすぐに若い牛に限定して輸入を再開、月齢をだんだん上げて、輸入が解禁されてきた。日本で狂牛病が発見されたときにアメリカは輸入をストップした、それはそのままにして、日本がアメリカ産の牛肉を一方的に受け入れなくてはならない状況がある。

 

家畜の感染症が(鳥インフルや口蹄疫など)グローバル化と歩調を合わせて大流行を起こしている。またさらなる問題として、ホルモン剤の問題がある。肥育ホルモンは性ホルモンであり、これを投与した家畜は早く太る。国際基準(WTO=世界貿易機構)は、天然ホルモン剤は残留基準がなく使い放題、合成ホルモン剤の規制はあるが、アメリカは使い放題である。

 

環境ホルモンの問題が取り沙汰されたときに、微量であっても生物を撹乱することがわかっており、ホルモン剤も微量でも大きな影響を与えると想像される。

しかし、米国産牛肉はホルモン剤使い放題で、EUは米国産牛肉の輸入を禁止しているが、日本は禁止していない。

 

 

 

・農薬と食品添加物も審査簡略化の流れ

農薬に関しては、今一番問題なのは「シグナル毒性」レセプター(受容体)に関わる毒性のことである。

ネオニコチノイド農薬、有機リン系農薬には、この脳のレセプターをかく乱させる作用がある。とくに小さな子どもなどが被害を受けると、影響が一生続くこともある。そのくらい毒性が強い。ホルモン剤も内分泌のかく乱であり、同様の可能性がある。

 

食品添加物は、実は1960年代には許可されていたのは350種程度。2005年は361種だったので、ずっと増えていなかったが、この10年で急激に許可数が増え続け、2016年時点で約450種が日本国内では許可されている。

国際汎用食品添加物という概念で、アメリカやEUで使用許可されていて、日本では不許可なものを、貿易障壁となるので日本も許可しなさいという流れである。

これにそって、日本でも添加物が増えていっている。そのために添加物の承認手続きも簡素化されている。

 

 

 

・遺伝子組み換え食品

遺伝子組換えも同様であり、遺伝子組み換え食品は次日本人が一番食べていると言われている。

リンゴをカットしても褐変しない遺伝子組換えリンゴがもう流通を始めるだろう。

ラウンドアップ耐性を持っている遺伝子組み換え作物が多いが、スーパー雑草という、ラウンドアップでも枯れない新種の雑草が出現して広がり、除草剤に種類も量も増え続けている。グリホサート(ラウンドアップは主成分)は大変な問題で、先に紹介したMoms across Americaが様々な食品を検査した際に、複数のワクチンからもグリホサートが検出されたことに大きな衝撃を起きた。ワクチンはゼラチンを安定剤をして使っており、ブタの靭帯から作られており、豚の飼料にグリホサートが(遺伝子組み換え大豆など)用いられているため入っていたのである。

2015年 WHOの外部研究機関IARCがグリホサートを2Aの発がん性物質(人間に対して「おそらく」発がん性がある、動物実験上では発がん性は確定)という認定をした。

 

 

 

・ゲノム編集技術

遺伝子を組み換えるのではなく、目的とする遺伝子の働きを正確にとめる技術。例えば、メラニン遺伝子を止めて白いカエルやコオロギなどが作られている。筋肉の発達をコントロールするミオスタチン遺伝子を止めることで、成長が早く筋肉質の動物が作られている。

京大が高級魚として知られるマダイで、ふ化して1年の時点で、大きいもので通常の1.2倍から1.5倍の重さにまで育つマダイを作り出すことに成功している。私たちがマッチョ豚と呼んでいる筋肉隆々の豚も出現している。

 

 

 

・カーン大学のセラリーニ教授らの動物実験について

除草剤耐性トウモロコシをラットに与えた実験で、2年間という長期投与実験で寿命の短縮が分かった。通常は90日のため寿命への影響は分からなかった。また200匹という多くのラットを用いている。通常は60~90匹。さらに雄と雌に分けたことで、雌への影響が大きいことが分かった。雌は、がんにかかりやすいことが示された。特に乳がんが多い。雄では肝臓や腎臓などの解毒臓器への影響がみられた。

しかしモンサントはこの論文を発表した雑誌の出版社の編集委員に息の掛かった研究者を送り込み、同雑誌が研究発表を取り下げるという事態が発生した。また、GMO推進の研究者がこぞって、セラリーニ批判を繰り広げた。

 私たちはどの情報が正しいのか、背景にはなにがあるのかを、注意深く見極めないといけない。

 

 

 

 

・最後に

「一日3回、私たちは世界を変えるチャンスが有る。

そのチャンスを大いに活かそう!」

食べものを選ぶときに、農薬や遺伝子組換えなどよく調べて買う。買う行為は投票行為と同じなので、応援したい生産者や食べもの、製法を選んで応援しよう。

 

 

 

 

<参考>

天笠先生の情報室

市民バイオテクノロジー情報室「バイオジャーナル」

http://www5d.biglobe.ne.jp/~cbic/journal/index.html

 

遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン「キャンペーン・ニュース」

http://www.gmo-iranai.org/

 

日本消費者連盟「消費者リポート」

http://nishoren.net/

 

 

【フランスのカーン大学による遺伝子組み換え実験とその後の論文取り下げの経緯】

「2年間のラット給餌試験で、モンサント社の遺伝子組換えトウモロコシとモンサント社の除草剤を混ぜて与えたら発がん性個体が増えた」というフランスのセラリーニ(Séralini)教授らの論文が発表されたのが2012年9月。エルゼビア(ELSEVIER)社が版元のFood and Chemical Toxicology誌だ。

即座にEFSA(欧州食品安全機関)など専門家筋から猛烈な抗議が寄せられました。

「使ったラットは2年近く飼育すると普通でも腫瘍ができやすい系統なので材料として不適切」

「各処理群の実験個体数が少ない、対照とする実験区が不十分」

「この結果から・悪影響があるともないとも結論は出せない」

「正しい実験方法でやり直すべき」

など。

出版社は2013年11月に論文を取り消し処分にしました。

セラリーニの共同研究者であるジョエル・スピルー博士が、実験に対する批判に対して、フランスの「ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール」誌上で答えました。

遺伝子組み換え セラリーニ研究9つの批判に対する9つの回答

批判その1: 200匹というラットのサンプル数はしっかりした実験を行うには少なすぎる

「グループごとに20匹、計200匹というサンプル数は、モンサント自身が三ヶ月の期間で行った実験に使ったラットの数と同じです。私達はしかもモンサントよりも毒性パラメーターを多く使用しました。さらにラット数を増やすにはもっと資金が必要でしたが、この研究にはすでに3百2千万ユーロ掛かっています。」

批判その2: 実験に使われた"SDラット(Sprague-Dawley)" は腫瘍が出来やすいことで知られている

「確かにそうですが、世界中の毒性研究で使用されているラットの系列でもあります。このラットのメリットは生物学的また肉体的に安定していることです。すべての固体がほとんど同じ体形、同じ体重を持つのです。モンサント社も含め、遺伝子組み換え作物を製造する企業が当初から研究に使用してきたのもこのラットです。そして事実は私達の目前にあるとおり、ラウンドアップとの組み合わせの有無に関わらず、遺伝子組み換えトウモロコシを与えられたラットには、より多くの発病が観察されたのです。それも非常に速いスピードで。 」

批判その3: 結果をよく見ると、遺伝子組み換えトウモロコシを与えられたラットのオスにおける腫瘍の発生は、参照グループよりも総合的に多いわけではない

「注目すべきは、正確には腫瘍の発生するスピードです。実験措置を与えられた3つのラットのグループでは腎臓や肝臓の腫瘍や疾患は4ヶ月目に既に現われ、11から12ヶ月目に爆発的に増えます。これは人間に置き換えると35~40歳の年齢です。一方参照グループのラットでは、腫瘍が現われるのは特に晩年、つまり23~24ヶ月目頃です。これはラットにおいては自然なことと考えられます。」

批判その4:ラットに与えられた餌の具体的な構成内容に関する情報が少なすぎることを科学者達は指摘する

「標準的な ラットフードです。これもまた遺伝子組み換え会社が自分達の研究に使用しているものと同じです。唯一の違いは、私達は遺伝子組み換えトウモロコシの含有率を正確に計測したことです。第1グループには11パーセント、第2グループには22パーセント、そして第3グループには33パーセントと言う具合に。」

批判その5:ラットが摂取した遺伝子組み換え食物量は人間が摂取するものよりはるかに多い

「間違い。私達が使用したNK603トウモロコシの量は、遺伝子組み換え食品の販売が自由で、表示義務のないアメリカ大陸の住民が生涯摂取する量に匹敵します。そもそもそのために遺伝子組み換え食品を発病要因として見極めることが妨げられ、病気との因果関係の否定が可能になっているのです。例えば”アメリカ人は15年来遺伝子組み換え食品を食べているのに病気になっていない”という主張が聞かれるのもそのためです。」

批判その6:研究を公表した "Food and Chemical Toxicology" はアメリカではさほど評価の高い媒体ではない

「二流誌とは程遠い、国際的な名声を持つ科学誌です。掲載される記事は、反対意見も発せられる委員会によって査証されます。モンサントや他の遺伝子組み換え作物会社がすべての再鑑定を公開しているのもこの雑誌です。」

批判その7:ジル・エリック・セラリーニは反遺伝子組み換え活動家として知られており、自分に都合の良い実験結果を作り出した

「完全な間違い。ジル・エリック・セラリーニと Criigen (遺伝に関する研究及び情報独立委員会)、そしてカーン大学研究所の研究員達は、遺伝子操作を行った生体に関する研究も行っています。それは生命体を知ることへの扉を開くからです。彼らは医薬品の製造に遺伝子組み換え生体を使用することには反対していません。例えばインシュリンは遺伝子組み換え生体をもとに製造されていますが、私は迷うことなく糖尿病患者に処方しています。こうした医薬品は、説明書の中に”再結合プロテイン”と言う表現が使用されていることから見分けることが出来ます。つまり医薬研究所での遺伝子組み換えの使用には賛成なのです。しかしジル・エリック・セラリーニも我々も、農業作物における遺伝子組み換え生体の使用に対しては反対です。表示が行き届いておらず、長期に渡る毒性についての研究も不十分だからです。」

批判その8:研究チームは癌の専門家ではなく腫瘍については無知だ・・・

「確かに我々は癌の専門家ではありませんし、そのことを隠し立てもしていません。これは癌の発生ではなく毒性に関する研究ですから異なる規定条項に従っています。そもそも私達は、”腫瘍”が”癌性”のものであるとは一言も言っていません。ラットの老化とトモに癌に発展する可能性を持つ乳腺繊維腺腫や皮膚腫瘍です。」

批判その9:再鑑定が必要だ

「それには賛成です。我々も再鑑定を望んでいますが、遺伝子組み換え会社ではなく独立の研究者によるものでなければなりません。現在の欧州食品安全機関(EFSA) の立場ではダメだと言うことです。」

その後、2014年6月24日、スプリンガー(Springer)社のEnvironmental Sciences Europe誌で校閲(査読)を受けた論文を載せるジャーナルから、ほぼ同じ内容で再出版された。

セラリーニのコメントは、

(1)論文が取り消された後、5つのジャーナルから再掲載の申し出があったが、無料で論文を読むことができるオープンアクセスの電子版、Environmental Sciences Europe誌を選んだ。

(2)最大の問題は動物を使った長期影響試験が義務付けられていないこと。我々はそれを強調したが理解されていない。

(3)我々の論文を批判した研究者やバイテク業界には、毒性学や病理学を知らない人が多く、的外れの批判がめだった。我々は腫瘍の兆候があると言っただけで、がんになったとは言っていないが、そのちがいも理解されなかった。

(4)編集部は、我々の実験にねつ造や不正はないことを認めた上で、論文の取り下げを要求した2013年、モンサント社で働いていた研究者を編集幹部に採用し、その後、我々の論文取り消しが決まった。産業界の利害、圧力が働いたのは明らかだ。

(5)組換え食品の安全性は論争になっている。科学の発展のためには論文が公開され、それをもとに議論することが必要だ。そのため我々は再度論文を発表した。

遺伝子組み換えの安全性を考える上で、賛成側、反対側の両方にとって、この実験について議論することは大変有意義だと思います。

しかし、遺伝子組み換え賛成側は、この実験に対して『非科学的』と烙印を押し、遺伝子組み換え反対側は、モンサント社の圧力であると主張して平行線です。

 

 

 

 

 

 

 

 

<講師プロフィール>

東京都出身。早稲田大学理工学部卒業。

環境問題を専門とするフリージャーナリスト。雑誌「技術と人間」の編集に携わる。

現在は、遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン代表。

市民バイオテクノロジー情報室代表。日本消費者連盟共同代表。法政大学講師。

主な著書(2000年以降)

『遺伝子組み換えとクローン技術100の疑問』東洋経済新報社 2000.11 

『知っておきたい遺伝子組み換え食品の知識』日本実業出版社 2000.8 

『化学物質から身を守る方法』風媒社ブックレット 2000.7

『遺伝子組み換え(イネ編)(FOR BEGINNERS SCIENCE)』現代書館 2000.6 

『エコロジー・環境用語辞典 暮らしに役立つ・わかりやすい』同文書院 2000.6

『危ない生命操作食品(シリーズ・安全な暮らしを創る)』コモンズ 2000.5

『フランケンシュタイン食品がやって来た!遺伝子組み換え食品Q&A』風媒社ブックレット 2000.1 

『食品汚染読本』緑風出版 2002.10 

『「狂牛病」何が問題か!恐るべき食肉汚染の実態』かもがわブックレット 2002.2

『地球とからだに優しい生き方・暮らし方』柘植書房新社 2003.2

『世界食料戦争』緑風出版 2004.9 

『いのちを考える40話 脅かされる地球・食品・人体』解放出版社 2004.3 

『遺伝子組み換え作物はいらない!広がるGMOフリーゾーン』家の光協会2006.4 

『バイオ燃料 畑でつくるエネルギー』 コモンズ 2007.10

『危険な食品・安全な食べ方 自らの手で食卓を守るために』 緑風出版 2008.2

『生物多様性と食・農』 緑風出版 2009.9

『食品・環境・生活用品の安全を考える』萌文社 2011.6

『東電の核惨事』 緑風出版 2011.7

『放射能と食品汚染』芽ばえ社 2011.8

『知っていますか?脱原発 一問一答』 解放出版社 2011.12.20

『暴走するバイオテクノロジー』 金曜日 2012.8

『この国のミライ図を描こう』現代書館 2012.10

『遺伝子組み換え食品入門』緑風出版 2013.9

『放射能汚染とリスクコミュニケーション』萌文社 2014.6

『子どもに食べさせたくない食品添加物』芽ばえ社 2014.7

『子どもに飲ませたくない清涼飲料』芽ばえ社 2015.7

『避けたいおやつ・食べさせたいおやつ』芽ばえ社 2016.7

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